核医学検査技術学
放射性医薬品を投与し、その集積・排泄の分布や時間変化から臓器の機能を画像化する検査(シンチグラフィ・SPECT・PET)の原理、装置特性、疾患別検査法、内用療法、品質管理を扱う。国試では「放射性医薬品」と「対象臓器・集積機序・撮影タイミング」の組合せが最頻出である。
放射性医薬品と検査対応
薬剤名を単独で覚えず、対象臓器・機序・撮影時期・特徴を束ねて学習する。
- 骨: 99mTc-HMDP・MDP等がハイドロキシアパタイトへの化学吸着で骨代謝亢進部位に集積。投与後2〜3時間で撮影し直前に排尿する。疲労骨折の検出感度は単純X線より高い。小児は骨幹端への集積が高く、金属部は集積欠損像となる。
- 心筋血流: 201TlCl(能動輸送)、99mTc-テトロホスミン・MIBIで虚血・狭心症を評価。負荷困難例はアデノシン等の薬物負荷を行う。脂肪酸代謝は123I-BMIPP、交感神経機能は123I-MIBG(H/M比)で評価。
- 脳血流SPECT: 123I-IMP(脂溶性、投与15〜30分後から撮影)、99mTc-ECD・HMPAO(高血流域で過小評価)。予備能はアセタゾラミド負荷で評価。123I-イオフルパンはドパミントランスポータに結合し被殻・尾状核に集積、Lewy小体型認知症・Parkinson病に用いる。123I-イオマゼニルは中枢性ベンゾジアゼピン受容体が機序。
- 腫瘍・炎症: 67Ga-クエン酸ガリウムはトランスフェリン受容体を介して集積、正常でも肝・骨・大腸が描出され投与48〜72時間後に撮影。
- 副腎: 髄質は123I-MIBG(カテコラミン取り込み、褐色細胞腫)を24時間後に撮影、正常心筋も描出。皮質は131I-アドステロールを用い撮影まで約7日を要する。
- 甲状腺: 99mTcO4⁻(Na/Iシンポーター)、Na123Iを用いる。摂取率検査前はヨウ素含有食品を約1週間制限。Basedow病で集積亢進、亜急性甲状腺炎で低下。遠隔転移にはNa131Iを経口投与する。
- 腎: 99mTc-MAG3は尿細管分泌型でERPF・Tmaxを算出、99mTc-DTPAは糸球体濾過型でGFRの指標、99mTc-DMSAは腎皮質静態検査で分腎機能を評価する。
- 肺血流: 99mTc-MAA(粒子径約30μm)が肺毛細血管を一時的に塞栓。体位で分布が変わり右左シャント疑いは全身像を撮影。肺換気は81mKr(半減期約13秒)吸入で行い、肺塞栓症では換気とのミスマッチを生じる。
- 肝・胆道等: 肝胆道シンチ(99mTc-PMT等)は新生児黄疸の鑑別に用いる。肝受容体シンチは99mTc-GSA(アシアロ糖蛋白受容体)をダイナミック収集しLHL15を算出。副甲状腺は99mTc-MIBI、センチネルリンパ節は99mTc-フチン酸の局所投与、消化管出血は99mTc標識赤血球で間欠出血も検出。
国試ポイント: 集積機序(能動輸送・受容体結合・化学吸着・塞栓・拡散)を臓器・撮影時期とともに整理する。
主要核種の放出γ線(PETは消滅放射線)エネルギー・物理的半減期・代表的用途を整理する。
| 核種 | 主なエネルギー | 物理的半減期 | 代表的用途 |
|---|---|---|---|
| ⁹⁹ᵐTc | 140 keV | 約6時間 | 骨・腎・甲状腺・肺血流など汎用(低エネルギー用コリメータ) |
| ¹²³I | 159 keV | 約13時間 | 脳血流(IMP)・MIBG・イオフルパン・甲状腺 |
| ¹⁸F | 511 keV(消滅放射線) | 約110分 | FDG-PET(ブドウ糖代謝) |
| ⁶⁷Ga | 93・185・300 keV | 約78時間 | 腫瘍・炎症シンチ(投与48〜72時間後撮影) |
| ²⁰¹Tl | 約70〜80 keV(特性X線) | 約73時間 | 心筋血流(能動輸送) |
国試ポイント: ⁹⁹ᵐTc=140keV/約6時間、¹⁸F=511keV(消滅放射線)/約110分は最頻出。⁶⁷Ga は複数の光子ピークをもつ。
ガンマカメラとコリメータ
NaI(Tl)シンチレータと光電子増倍管、位置演算回路でγ線の位置とエネルギーを求める。NaI(Tl)は吸湿性が高く黄変すると感度均一性が低下する。厚いほど感度は上がるが空間分解能は落ちる。CdZnTe(CZT)半導体を用いた直接変換型カメラは常温動作・高エネルギー分解能・良好な計数率特性をもつ。
- 平行多孔コリメータの空間分解能は被写体-コリメータ間距離が大きいほど低下する(固有空間分解能は検出器本体で決まる)。穴径が小さく穴長が長いほど分解能は高いが感度は低い。隔壁が薄いほど高エネルギーγ線のペネトレーションを生じやすい。
- 99mTc(140keV)は低エネルギー用、111In(172・247keV)は中エネルギー用、131Iは高エネルギー用コリメータを使う。
国試ポイント: コリメータ種類と核種エネルギー、距離・穴径・穴長・隔壁厚と分解能/感度/ペネトレーションの関係を区別する。
SPECT(再構成・減弱補正)
周囲を検出器が回転して多方向から投影データ(サイノグラム)を収集し断層像を再構成する。
- 総合空間分解能はFWHMで評価し線線源で測定、回転中心のずれはサイノグラムで評価する。
- 再構成はフィルタ逆投影法(FBP、rampフィルタ)と逐次近似法(ML-EM・OS-EM)。散乱除去はTEW法、減弱補正はChang法やCT、分解能低下にはコリメータ開口補正を用いる。
- SPECT/CTではCT画像の減弱係数マップで減弱補正する。部分容積効果により小構造物の定量値は過小評価される。心電図同期心筋SPECTは左室駆出率を算出でき、2検出器型は180度収集が可能。ノイズ軽減には収集時間の延長が最も効果的である。
国試ポイント: FBPと逐次近似法、各補正法(減弱・散乱・コリメータ開口)を目的別に整理。
PET(消滅放射線・同時計数・FDG)
陽電子が電子と対消滅して正反対方向へ飛ぶ2本の消滅放射線(各511keV)を対向検出器で同時計数(LOR)して画像化する。コリメータは用いない。偶発同時計数は投与放射能量にほぼ比例、減弱補正にはX線CT像を用いる。
- 空間分解能はシンチレータが小さいほど高いが、視野辺縁では斜入射(パララックス誤差)で低下する。陽電子飛程が長いほど分解能は低下する。
- TOF法は到達時間差から発生位置をLOR上の特定範囲に絞り込みS/N比を高める。3D収集はセプタを除き感度を高め検査時間を短縮するが散乱・偶発同時計数が増える。
- 18F-FDGはブドウ糖代謝を反映し腫瘍・炎症に集積亢進。生理的集積は脳・心筋・肝・腎尿路・外眼筋等にみられ、肺は含まれない。高血糖は集積を低下させ、事前に血糖を測定する。18Fはサイクロトロンで18Oを標的に製造でき半減期は約110分。13N-NH3は心筋血流を反映する。
国試ポイント: 同時計数の種類と補正法、TOF・3D収集の利点、FDGの生理的集積部位(肺は除く)。
データ収集と定量(SUV等)
SUVは組織内放射能濃度を(投与放射能量/体重)で割った半定量指標で、算出には腫瘍部放射能濃度・投与放射能量・体重が必要。PET装置とドーズキャリブレータのクロスキャリブレーションが前提。18F-FDGの主な排泄経路は腎・尿路系で、ダイナミック収集が必須の指標にLHL15や腎Tmaxがある。
国試ポイント: SUV=組織内放射能濃度÷(投与放射能量/体重)を押さえる。
内用療法
- Basedow病・分化型甲状腺癌にはNa131I(β線)を経口投与。Quimbyの式による投与量決定には甲状腺推定重量・目標吸収線量・24時間摂取率・有効半減期を用い、甲状腺ホルモン値は用いない。
- 骨転移の疼痛緩和には223Ra(α線)を用いる。
国試ポイント: 核種と適応(131I:甲状腺、223Ra:骨転移)、Quimbyの式の変数を対応づける。
品質管理
ドーズキャリブレータ(電離箱式)には核種ごとの換算定数が設定される。ジェネレータから娘核種を抽出する操作をミルキングという。JESRA X-0067では固有均一性・回転中心ずれが毎月、SPECT均一性が6か月ごとの点検項目。手術中のセンチネルリンパ節同定にはガンマプローブを用いる。投与時副作用で最多は血管迷走神経反射で、患者急変時は検査を中断し医師の指示を仰ぐ。
国試ポイント: 点検項目と頻度、換算定数・ミルキングの用語、副作用の最多が血管迷走神経反射である点。
頻出ポイント
- 放射性医薬品は「臓器・集積機序・撮影タイミング・特徴」をセットで学習する。
- コリメータ種類と核種エネルギー、距離・穴径・隔壁厚と分解能/感度/ペネトレーションの関係。
- SPECTの再構成法(FBP・ML-EM・OS-EM)と補正法(減弱・散乱・コリメータ開口)を目的別に整理。
- PETの同時計数(真の・散乱・偶発)、TOF・3D収集の利点、パララックス誤差を理解する。
- SUVの計算式と必要パラメータ、クロスキャリブレーションの必要性。
- 心電図同期心筋SPECTの左室駆出率評価、部分容積効果による定量値の過小評価。
- 内用療法の核種(131I・223Ra)と適応、Quimbyの式の変数。
- 品質管理の点検項目・頻度、ミルキング、副作用の最多(血管迷走神経反射)。
国試での出題(年度別)
この科目はデータのある年度で計 149 問。番号をタップで問題へ。解いた記録は緑/赤の枠で残り、右上の青点は解説ありです。