
日本における、ある悪性腫瘍の病期別の生存率の図(別冊No. 5)を別に示す。 この悪性腫瘍はどれか。
正答と見分け方
正答:2

病期I〜IIIは5年で90%以上、IV期でも約40%と生存率が高く、予後良好な乳癌の曲線に一致する。
- 膵癌
- 乳癌
- 膠芽腫
- 小細胞肺癌
- 甲状腺未分化癌
放射線治療技術学は、がんを中心とする疾患に対して電離放射線を用いた治療を安全かつ正確に行うための知識を扱う。治療の適応判断、外部照射・小線源・内用療法などの手技、治療計画と線量評価、装置の品質管理、そして有害事象の理解までが出題範囲となる。
放射線治療は、腫瘍の局所制御を目的とする根治照射と、症状緩和を目的とする緩和照射に大別される。治療方針の決定には、腫瘍の大きさ、組織型・分化度、リンパ節転移や遠隔転移の有無、患者の全身状態が関与する。全身状態の指標である PS(Performance Status) は治療法の選択に影響する。一方、治療中の皮膚反応の程度は有害事象の指標であり、生存や局所制御を直接規定する予後因子ではない。
照射の時間的位置づけには、術前照射、正常組織を照射野から外して行う術中照射、再発予防の術後照射がある。緩和照射のうち、脊椎転移による脊髄圧迫症状のように神経障害が急速に進行する病態は緊急照射の適応となる。
国試ポイント: 予後因子(腫瘍径・分化度・転移・PS)と有害事象指標(皮膚反応)を区別する。脊髄圧迫症状は緊急照射の適応。
正常組織を保護しつつ腫瘍制御を高めるため、総線量を複数回に分けて照射する分割照射が基本となる。1回線量と分割回数の生物学的効果は LQモデル(linear-quadratic model) で評価され、組織固有のパラメータ α/β 比 が用いられる。α/β 比が小さい組織は1回線量の増減に敏感で、晩期反応組織や前立腺癌などがこれに該当する。
分割法には、1日複数回に分けて1回線量を小さくする過分割照射(晩期有害事象の抑制をねらう)、総治療期間を短縮する加速過分割照射、1回線量を大きくして少ない回数で行う寡分割照射などがある。異なる分割法の比較には総治療期間の差の補正を要する。
国試ポイント: α/β が小さい=前立腺癌など。過分割は1日の照射回数が多く晩期障害を抑える方向。
高エネルギー X 線・電子線を発生する リニアック(直線加速器) では、電子加速用マイクロ波の発振管としてマグネトロンまたはクライストロンが用いられる。モニタ線量計は複数のセグメントに分割され線量率を監視できる。X 線の平坦化フィルタの形状はエネルギーに依存する。電子線治療は体表付近で照射野を整形して用い、術中照射やケロイド、全身皮膚照射などに応用される。
粒子線治療では、陽子線・炭素線がブラッグピークにより深部で線量を集中でき、周囲正常組織の線量を低減できる。炭素線は陽子線より線エネルギー付与(LET)が高く、生物学的効果に優れる。加速器にはサイクロトロンやシンクロトロンが用いられる。腫瘍の深さ方向の広がりに合わせてピークを広げる 拡大ブラッグピーク(SOBP) が用いられ、その幅は標的の深部方向の長さで決まる。ビーム照射法には散乱体法(ワブラー法など)と、電磁石でビームを走査するスキャニング法がある。

国試ポイント: 炭素線は高LETで線量分布・生物効果ともに優れる。SOBP幅は標的の深部方向長で決定。
治療計画には治療計画用 CT が用いられ、フラット天板や位置合わせ用レーザーポインタが必要となる。標的体積は、画像で描出される GTV(肉眼的腫瘍体積)、微視的進展を含む CTV(臨床標的体積)、位置の不確かさを見込んだ PTV(計画標的体積) の順に定義され、PTV は CTV より大きい。術後予防照射では肉眼的腫瘍がないため GTV は定義できない。
線量分布の評価には DVH(線量体積ヒストグラム) を用い、微分型と積分型がある。V20 は 20 Gy 以上が照射される体積(またはその割合)、Dmax は対象が受ける最大線量を表す。線量計算アルゴリズムは複数あり、粒子輸送を再現するものに Monte Carlo 法や Boltzmann 輸送方程式に基づく方法がある。
線量の投与量はモニタ単位 MU で管理する。深部量百分率(PDD)は SSD に依存する量で、電子線の線質指標には R50 が用いられる。ウェッジフィルタや接線照射(乳房温存療法など)といった照射技術も計画に組み込まれる。

国試ポイント: GTV ⊂ CTV ⊂ PTV。PDD は SSD 依存、電子線線質指標は R50。DVH の V20・Dmax の定義を押さえる。
IMRT(強度変調放射線治療) はビーム強度を空間的に変調し、標的に線量を集中させつつ周囲臓器を保護する。逆方向計画(インバースプランニング)を基本とし、上咽頭癌などで唾液腺障害の軽減が期待できる。定位放射線治療(SRT) は病巣に多方向から集中照射する手法で、脳定位照射ではノンコプラナ照射が用いられる。早期非小細胞肺癌や骨転移などに対する体幹部定位放射線治療(SBRT)も適応がある。
照射位置の精度を担保するため、治療直前に画像で位置照合を行う IGRT(画像誘導放射線治療) が用いられる。照合基準には骨構造や体表面が用いられ、コーンビーム CT や超音波画像による臓器照合が可能である。体位の再現性を高める固定具として、熱可塑性樹脂のシェルが用いられる。
国試ポイント: IMRT はインバースプランで周囲臓器(唾液腺など)を保護。IGRT の照合基準は骨・体表面・CBCT。
小線源治療は線源を腫瘍近傍に配置して局所に高線量を与える手法である。子宮頸癌の腔内照射では A 点を線量基準とし、根治では外部照射と併用する。腔内照射には Ir-192 や Cs-137、高線量率治療には Co-60 や Ir-192 が用いられる。前立腺癌では I-125 の永久挿入治療が行われる。遠隔操作式後充填装置 RALS では、線源に先立って模擬線源を送り移送経路の通過を確認する。
内用療法は特定の組織・臓器に取り込まれる放射性医薬品を投与する治療で、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌に対する Ra-223、骨転移の疼痛緩和に用いる Sr-89 などがある。
主な照射・治療法の分類と代表的核種・適応を整理する。
| 治療法 | 線源・放射線 | 代表核種/装置 | 代表的な適応 |
|---|---|---|---|
| 外部照射(X線・電子線) | 体外の加速器 | リニアック | 各種固形腫瘍の根治・緩和照射 |
| 外部照射(粒子線) | 体外の加速器 | 陽子線・炭素線(サイクロトロン/シンクロトロン) | 深部限局腫瘍(ブラッグピークで線量集中) |
| 密封小線源(腔内照射) | 密封線源を腔内に留置 | Ir-192・Cs-137、高線量率は Co-60・Ir-192 | 子宮頸癌(A点基準・外部照射併用) |
| 密封小線源(組織内照射) | 密封線源を組織内に永久挿入 | I-125 | 前立腺癌(永久挿入) |
| 非密封 RI 内用療法 | 放射性医薬品を投与 | Ra-223、Sr-89 | 骨転移(去勢抵抗性前立腺癌、疼痛緩和) |
国試ポイント: 子宮頸癌腔内照射=A点基準・外部照射併用。前立腺癌の永久挿入=I-125。RALS の模擬線源は経路確認用。
有害事象は照射中〜直後の早期(急性期)反応と、数か月以降の晩期反応に分けられる。急性期反応には粘膜炎、皮膚炎、白血球減少などがあり、晩期反応には前立腺照射後の直腸出血、乳房照射後の肺臓炎・肋骨骨折などがある。臓器ごとに 耐容線量 が異なり、水晶体や脊髄は比較的低い線量で障害が生じうる。TD5/5 は、照射後5年間で5%以下の確率で有害事象が生じる線量と定義される。小児では骨成長障害に注意する。
治療の安全性は品質保証・品質管理(QA/QC)で担保する。始業前点検や定期点検で出力の不変性などを確認し、装置導入時には仕様適合を確かめる受入試験を行い、以後の品質管理の基準データを取得する。IMRT のように複雑な照射では MU 値の直線性など、より厳しい基準が求められる。線量計測は標準計測法に基づき、水吸収線量校正定数は国家標準へのトレーサビリティを要する。
国試ポイント: 早期=粘膜炎・皮膚炎、晩期=直腸出血・肺臓炎。TD5/5 の定義。受入試験は仕様適合確認と基準データ取得。
| 指標 | 定義の基準 | 特徴 |
|---|---|---|
| PDD | 同一SSD、同一照射野で最大線量深と任意深の線量比 | SSDと照射野の影響を受ける |
| TAR | 同一点の空中線量に対するファントム内線量の比 | SSDに依存しない |
| TMR | 同一SADで最大線量深と任意深の線量比 | 回転照射・アイソセンタ法で使いやすい |
| TPR | 同一SADで基準深と任意深の線量比 | 基準深を最大線量深以外にも設定できる |
| OCR | 中心軸線量に対する軸外線量の比 | ビーム平坦度や半影を表す |
基本は、処方線量を「基準条件での出力」「深部線量係数」「照射野係数」「ウェッジ・トレイなどの係数」で割ってMUを求める。SSD法ではPDD、SAD法ではTMR・TPRを用いる。
MU = 処方線量 /(基準出力 × 深部線量係数 × 照射野係数 × 補助具係数)
数値を代入する前に、PDDを百分率のまま使わず比へ直すこと、正規化点と処方点が一致しているかを確認する。

日本における、ある悪性腫瘍の病期別の生存率の図(別冊No. 5)を別に示す。 この悪性腫瘍はどれか。
正答:2

病期I〜IIIは5年で90%以上、IV期でも約40%と生存率が高く、予後良好な乳癌の曲線に一致する。

肺癌に対しアイソセンタに処方線量 60 Gy を前後対向 2 門で照射したときの線量分布図(別冊No. 8)を別に示す。 矢印で示す点の線量[Gy]に最も近いのはどれか。
正答:3

処方60Gyがアイソセンタの100%。矢印の点は95%(黄)線の外側で90%(マゼンタ)線付近、約90〜92%に相当するので55Gyが最も近い。

放射線治療に用いる器具(別冊No. 6)を別に示す。 この器具を用いて根治的放射線治療を行うのはどれか。
正答:4

図は頭頸部から肩を覆う熱可塑性シェル(固定具)を寝台に固定したもので、頭頸部照射の体位固定に用いる。

上咽頭癌の放射線治療計画における計画標的体積〈PTV〉(実線)と耳下腺(点線) の線量体積ヒストグラムを図に示す。 PTV の D95%[Gy]と耳下腺の V24Gy の組合せで正しいのはどれか。 PTV D95% 耳下腺 V24Gy
正答:1

DVHで実線がPTV、点線が耳下腺。PTVのD95%は体積95%に対応する線量で実線から約67 Gy。耳下腺のV24Gyは24 Gyでの点線の体積で約10%。組合せは67 Gyと10%。

放射線治療時の深部線量分布を図に示す。 図の a から e の線量分布のうち炭素線の物理線量分布を示すのはどれか。
正答:5

荷電粒子線(b〜e)はブラッグピーク由来のプラトーと急峻な遠位低下を示し、緩やかに減衰する光子線aと区別される。炭素線は核破砕反応によりブラッグピークより深部にも裾(フラグメンテーションテール)を引くのが特徴で、これを示すのはe。

水ファントム中の深さ方向における 10 MV X 線の等線量曲線(別冊No. 7A)を別に示す。 (別冊No. 7B)の等線量曲線はどれか。 図
正答:3

別冊No.7Aは深部まで緩やかに広がる10 MV X線の分布。No.7Bは高線量域が体表近くに限局し遠位で急峻に減弱しており、有限飛程をもつ15 MeV電子線の分布である。

MLC の構造とビームの通過位置(別冊No. 8)を別に示す。 MLC の透過線量を示す用語の組合せで正しいのはどれか。 A B
正答:4

別冊No.8で、ビームAはリーフ本体を貫通する位置(リーフ内透過=intra‑leaf transmission)、ビームBは隣接リーフの隙間(tongue‑and‑groove部)を通る位置(リーフ間透過=inter‑leaf transmission)を示す。

SAD 一定の X 線 1 門照射で得られた測定結果を表に示す。 このとき SAD 一定の照射で照射野 10 × 30 cm²、深さ 5 cm の点に 2 Gy を投与するための MU 値に最も近いのはどれか。 ただし、モニタ線量計の校正は 10 × 10 cm² で行い、水吸収線量校正定数は 5 × 10‑2 Gy/nC とする。等価照射野は A/P 法によって求め、等価照射野に対する出力係数は最大線量深( max)で計算し、このときの TMR は 0.95 とする。 各照射野サイズにおける真の計測値[nC/100 MU] 深さ 10 × 10 cm² 12 × 12 cm² 15 × 15 cm² 20 × 20 cm² max 20.00 21.00 22.00 23.00
正答:2

照射野10×30 cm2の等価正方形はA/P法で4×(10×30)/(2×(10+30))=15 cm角となる。等価照射野15×15の出力係数に対応する測定値22.00 nC/100 MU、水吸収線量校正定数0.05 Gy/nC、TMR=0.95を用いると、MU=2/(0.95×22.00×0.05/100)≈191となる。

直線加速器で平坦な線量プロファイルを期待して測定したところ、図のような線量プロファイルが得られた。 考えられる原因はどれか。
正答:3

平坦であるべき線量プロファイルに不整な形状(局所的な線量低下など)が生じる原因として、ビーム経路上にコリメータ下方の意図しない構造物が混入し、その部分だけ線量が局所的に減弱することが挙げられる。


高エネルギー X 線の深部量百分率曲線の図を示す。 正しいのはどれか。 ただし、照射野は全て等しいものとする。
正答:4

高エネルギーX線のPDDでは、エネルギーが高いほど(1)表面線量が低く(皮膚節約が大きく)、(2)ビルドアップのピーク深(dmax)が深く、(3)深部でのPDDが高い。図4のみ、表面線量が10 MVで最小・4 MVで最大、dmaxが4→6→10 MVの順に深くなり、深部で10 MVが最大という3条件をすべて満たす。正答は4。

次の深部線量分布を示す放射線はどれか。
正答:2

深部線量分布の形状から放射線種を同定する。入射部(プラトー)の線量が低く、飛程の終端で鋭いブラッグピークを形成する分布は荷電粒子線に特徴的である。ピークが特に鋭く、ピーク後方にも核破砕によるフラグメントテール(尾引き)を伴うのは炭素線の特徴で、高LETの重イオン線を示す。

直交 2 門照射図(別冊No. 9)を別に示す。 ターゲットに均一な線量を投与するための 0°ビーム用ウェッジと 90°ビーム用ウェッジの正しい組合せはどれか。 0°ビーム用ウェッジ 90°ビーム用ウェッジ
正答:3

直交2門ではウェッジの厚い端を2ビームが重なる側(hinge側)に向けてホットスポットを相殺する。0°用B・90°用Cの組合せがこれに一致する。

下図の DVH について正しいのはどれか。
正答:4

累積DVHは横軸が線量[Gy]、縦軸が体積[%]。Vₐ(例V20)は「その線量以上を受ける体積の割合[%]」、Dᵥ(例D53)は「その体積割合が受ける線量[Gy]」を表す。図でOAR曲線は20Gy付近で体積約14%を通る。

放射線治療計画の線量分布図(別冊No.7)を別に示す。この照射方法はどれか。
正答:1

胸部CT上の線量分布で、片側胸壁を斜めに挟む2門(RAO・LPO)が体表に沿って接し、肺を避けて胸壁を覆う=接線照射。

電子線の複数の PDD データ(別冊No. 6)を別に示す。 変更した計測条件パラメータはどれか。
正答:2

電子線のPDD。全曲線が同じ深さ(約10cm)で制動放射の尾部に収束し実用飛程Rpが一致するのでエネルギーは共通。相違は表面から下降部の相対線量で、飛程を変えずここを変えるのは照射野。

高エネルギー電子線における水の深さと深部量百分率の関係を図に示す。 電子線のエネルギー[MeV]に最も近いのはどれか。 ただし、水の質量阻止能は 1.9 MeV・cm²・g⁻1 とする。
正答:4

深部量百分率曲線で実用飛程Rp(下降部の外挿が制動X線尾部と交わる点)は約8.4cm。電子線エネルギーはE≈質量阻止能×Rp≈1.9×8.4≈16MeV。
この科目はデータのある年度で計 160 問。番号をタップで問題へ。解いた記録は緑/赤の枠で残り、右上の青点は解説ありです。