診療放射線技師 過去問集
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放射線安全管理学

放射線防護の原則から線量評価、施設・法令に基づく管理体制までを扱う。国試では遮蔽・線量当量・表面汚染密度などの計算問題と、ICRP勧告や関係法令の知識問題が出題される。

放射線防護体系と被ばくの分類

ICRP2007年勧告は、放射線防護の目的を確定的影響の回避と確率的影響の発生確率の抑制に置き、防護の3原則として行為の正当化・防護の最適化・線量限度の適用を掲げる。正当化は代替手段のコストにも配慮して行い、最適化(ALARA)では経済的・社会的要因を考慮しなければならない。

被ばく状況は3つに区分される。線量限度が適用される計画被ばく状況と、線量限度ではなく参考レベルが適用される緊急時被ばく状況現存被ばく状況である。緊急時被ばく状況では職業被ばくにも線量限度ではなく参考レベルが用いられる。

被ばく分類は職業被ばく・公衆被ばく・医療被ばくの3つである。職業被ばくは業務上受ける被ばく、公衆被ばくは一般公衆の被ばく(航空機利用乗客、放射線業務従事者の胎児など)、医療被ばくは患者が診断・治療で受ける被ばくである。生物医学研究の志願者やX線撮影時の患者介助者の被ばくも医療被ばくに分類される。

国試ポイント: 「誰の立場での被ばくか」で分類が決まる。母体が放射線業務従事者なら胎児の被ばくは公衆被ばく、母体が患者として医療行為を受けた場合の胎児の被ばくは医療被ばくとなる対比が頻出。

防護量と実用量

放射線防護の量は、リスク評価に用いる防護量と、実測に用いる実用量に区分される。吸収線量(Gy)は単位質量あたりの吸収エネルギーを表す物理量である。

放射線加重係数は光子・電子が1、陽子が2、α粒子が20。同じ臓器吸収線量ならα粒子で等価線量が最大となる。組織加重係数はICRP2007年勧告で骨髄・結腸・肺・胃・乳房が0.12で最大、生殖腺0.08、甲状腺0.04、皮膚・骨表面などが0.01である。乳房だけに2.0 mGyのX線(w_R=1)が均等に当たれば、実効線量は 2.0×0.12=0.24 mSv となる。

内部被ばくの管理には預託実効線量を用いる。摂取後、成人は50年間、子どもは摂取年齢から70歳までを積算期間とする。

国試ポイント: 実効線量の算出に直接用いるのは組織加重係数。放射線加重係数(等価線量の算出)と混同しない。内部被ばくは預託実効線量で管理する点も頻出。

外部被ばく防護と遮蔽計算

外部被ばく防護の3要素は時間・距離・遮蔽である。点線源からの線量率は逆二乗則に従い、線量率 ∝ 1/(距離)^2 で減少する。線源からの線量は「実効線量率定数(Γ)×放射能÷距離^2×時間」で概算できる。

要素対策効果の要点
時間被ばく時間を短くする(手技の習熟・事前準備)積算線量は時間に比例。時間1/2で線量1/2。
距離線源から離れる(鉗子・遠隔操作の利用)点線源では逆二乗則。距離2倍で線量率1/4。
遮蔽線源と人の間に遮蔽材を置く(鉛・コンクリート等)線量は exp(−μx) で減衰。厚さHVL枚数nで(1/2)^n。
00.250.50.751.01234 距離2倍→1/4 距離4倍→1/16 線量率(相対値) 線源からの距離(相対値)
図: 点線源からの距離と線量率の関係(逆二乗則)。距離が2倍になると線量率は1/4、4倍で1/16に低下する。距離をとることが有効な防護になる。

遮蔽計算では半価層(HVL)または線減弱係数(μ)を用いる。厚さHVLの遮蔽材n枚通過後の線量比は(1/2)^n。線量を1/1000にするには n=log_2(1000)≒9.97 が必要で、HVLが4 mmの鉛なら約 4×9.97≒40 mm となる。線減弱係数を用いる場合は線量比=exp(−μx) から x=ln(減弱倍数)/μ で求め、μ=1.7 cm^−1・ln 1000≒6.9 なら x≒6.9/1.7≒4.2 cm となる。

11/21/41/81/1601234 半価層1枚→1/2 透過線量(相対・対数) 遮蔽体の厚さ(半価層の枚数)
図: 遮蔽体の厚さと透過線量の関係。片対数(縦軸が対数)で表すと指数減弱 exp(−μx) が直線になる。厚さが半価層1枚増すごとに透過線量は1/2ずつ減る。

国試ポイント: HVL既知なら n=log_2(減弱倍数)、線減弱係数既知なら x=ln(減弱倍数)/μ。ln 10≒2.3 を用い、1/1000は ln 1000=3×ln 10 と分解する。

内部被ばくと汚染管理

内部被ばく防護の原則はDC(希釈・分散/隔離・除去)で、吸入・経口摂取の防止が中心となる。濃縮・集中は原則に含まれない。内部被ばくの最大の原因となる天然放射性核種はラドン(222Rn)である。

内部被ばく線量の評価には2系統がある。体外計測法ホールボディカウンタ等で体内のγ線放出核種を体外から測定し、残留関数で摂取量を評価する。バイオアッセイは尿・便などの生体試料を分析して摂取量を算出し、体外計測が困難なα・β線放出核種(90Srなど)に適する。トリチウム(H-3)は液体シンチレーションカウンタで測定する。

表面汚染密度(Bq/cm^2)は、間接法(スミア法)・直接法いずれも「正味計数率÷(各種効率の積×測定面積)」で計算する。総計数率からバックグラウンドを引き、cpmをcps(÷60)に直し、検出器効率・線源効率(・ふき取り効率)と面積の積で除す。スミア法は遊離性汚染の測定に適する。

複数核種を含む放射性廃液・排気では、各核種の濃度を排水中(排気中)濃度限度で除した比の総和が1以下となるまで希釈することが排出の条件となる。

国試ポイント: 表面汚染密度は「BGを引く→cpmをcpsに直す→効率と面積で割る」で機械的に解ける。排水は濃度限度比の和≦1、体外計測(γ・残留関数)とバイオアッセイ(α・β)の使い分けが頻出。

管理区域と施設・線量限度

医療法施行規則では、エックス線診療室の画壁等の外側における実効線量限度を1週間につき1 mSvと規定する。診療用放射線照射装置使用室など出入口が1か所に限定される放射線設備にも構造設備基準の定めがある。非密封放射性同位元素の貯蔵容器は、表面から1 mの距離における実効線量率が100 µSv/h以下となるよう遮蔽する。

放射線業務従事者の主な線量限度として、水晶体の等価線量限度は年150 mSv(改正後は5年平均で年20 mSv、いずれの1年も50 mSvを超えない)であり、妊娠可能な女性の実効線量は5 mSv/3月を超えないようにする。非密封RIの取扱いではゴム手袋・専用作業衣を着用する。

区分対象線量限度
職業被ばく・実効線量放射線業務従事者5年間で100 mSv、かつ いずれの1年も50 mSv
職業被ばく・実効線量妊娠可能な女性上記に加え 5 mSv/3月
職業被ばく・実効線量妊娠中の女性(内部被ばく)出産までに 1 mSv
職業被ばく・等価線量水晶体5年間で100 mSv、かつ いずれの1年も50 mSv(改正後)
職業被ばく・等価線量皮膚500 mSv/年
職業被ばく・等価線量妊娠中の女性の腹部表面出産までに 2 mSv
公衆被ばく・実効線量一般公衆1 mSv/年

体幹部を防護衣で覆う不均等被ばくでは、頸部(防護衣外, H_a)と防護衣内(H_b)の2か所に個人線量計を装着し、E=0.11 H_a+0.89 H_b などの算出式で評価する。頸部5 mSv・腹部1 mSvなら E=0.11×5+0.89×1=1.44 mSv となる。

国試ポイント: 画壁外側1 mSv/週、貯蔵容器1 mで100 µSv/h以下、水晶体150 mSv/年、妊娠可能な女性5 mSv/3月は数値ごと問われる。不均等被ばくの実効線量は算出式に線量計値を代入して求める。

診療放射線と医療安全(DRL・リスク管理)

診断参考レベル(DRL)は患者の医療被ばくにおける防護の最適化を目的とする指標である。X線CTでは CTDIvol と DLP を指標とする。IVRの患者皮膚線量低減には透視パルスレートを下げるなどが有効で、術者の水晶体被ばくは不均等被ばくとして管理する。

医療安全では、事故原因が究明できていなくてもインシデントレポートを提出する。スイスチーズモデルは、個人の過ちと職場の環境・体制に潜む危険が重なって安全対策の穴を作るという考え方である。X線CT装置などは厚生労働省通知により保守点検計画を策定すべき装置とされる。

国試ポイント: DRLは最適化のための指標(限度ではない)。CTはCTDIvol・DLP。インシデントレポートは原因究明前でも提出、という医療安全の考え方が頻出。

関係法令と放射線管理体制

放射線安全に関わる主な法令を観点別に整理する。

管理区域に常時立ち入る放射線業務従事者への健康診断は、電離則とRI規制法の両方に規定がある。汚染状況の測定場所には管理区域の境界や廃棄作業室が含まれ、表面汚染の測定方法はJIS規格に規定されている。廃棄業者による廃棄では注射針など金属製品は不燃物に区分される。

国試ポイント: 「どの法令が何を定めるか」を軸に整理する。照射録の署名(技師法)、X線装置の届出・画壁基準(医療法)、汚染測定・特定RI(RI規制法)、線量限度・健康診断(電離則)の対応を押さえる。

頻出ポイント

国試での出題(年度別)

この科目はデータのある年度で計 77 問。番号をタップで問題へ。解いた記録は緑/赤の枠で残り、右上の青点は解説ありです。

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