診療画像機器学
診療画像機器学は、X線の発生・制御から検出、核医学・放射線治療用機器までの構造・原理・性能評価とJIS規格を扱う。出題頻度の高い装置群を整理する。
X線管装置
X線管は陰極(フィラメント)から放出した熱電子を高電圧で加速し、陽極(ターゲット)に衝突させて制動放射と特性X線を発生させる。診断用の多くは回転陽極形で、焦点を高速回転させ熱負荷を分散して短時間許容負荷を高める。
| 部位 | 役割・特徴 |
|---|---|
| 陰極(フィラメント) | 加熱により熱電子を放出する。管電流を決める(負極側) |
| 集束カップ | 陰極を囲み、放出した熱電子を焦点へ収束させる |
| 陽極(ターゲット) | 加速電子が衝突しX線を発生。高融点のタングステンを用いる(正極側) |
| 回転陽極 | 焦点軌道を高速回転させ熱負荷を分散し、短時間許容負荷を高める |
| 管球窓(放射窓) | X線を管外へ取り出す部分。乳房用ではベリリウム窓で軟X線の透過を高める |
発生するX線のエネルギー分布(スペクトル)は、なだらかな連続X線(制動放射)に、ターゲット元素固有の鋭い特性X線ピークが重なった形になる。連続X線の最大光子エネルギーは加速に用いた管電圧で決まる(100kV→最大100keV)。
- 焦点には実焦点(電子が当たる実面積)と実効焦点(陽極傾斜で投影された見かけの焦点)があり、実効焦点は実焦点より小さい。陽極角を小さくすると実効焦点は小さくなり照射野は狭くなる。
- 回転陽極の0.1秒以下の短時間許容負荷は、経験的に焦点軌道半径の平方根に比例して増大する(半径1.2倍で √1.2−1 ≒ 約10%増)。回転数と軌道径をともに変える場合の負荷倍数は「軌道径比 × √(回転数比)」で近似する。
- ヒール効果により陽極側のX線強度は陰極側より低く、強度分布は陰極側が大きい。線質も陰極側で軟線成分が多い。
- 焦点外X線は焦点に衝突した反跳電子が陽極全面に再衝突して生じ、陽極全体が線源となる。一様なかぶりを与えコントラストを低下させ、管電圧が高いほど増える。
- ブルーミング現象は管電流を大きくすると空間電荷効果で電子ビームが広がり実効焦点寸法が増大する現象。空間電荷制限領域の管電流は陰極温度にほぼ依存せず、小焦点ほど空間電荷は多い。ヒートユニット(HU)は陽極に加わる熱エネルギー量の単位。
国試ポイント: 焦点軌道径・回転数と短時間許容負荷の関係、ヒール効果と焦点外X線の性質は計算・正誤の両面で頻出。
X線高電圧装置とインバータ制御
X線管への高電圧供給には単相・三相の整流方式と近年主流のインバータ式がある。インバータ式は整流・平滑後に数十kHzでスイッチングしてから昇圧・整流し、小型軽量化とリプル低減を両立する。
- 電力(kW)は概算で 管電圧(kV)×管電流(mA)/1000。三相12ピークやインバータ式はリプルが小さくこの積にほぼ一致。
- JISのX線管入力は「管電圧波高値 × 平均管電流 × 係数f」で定義され、リプル10%以下で f=1.0、10%超25%以下で f=0.95、25%超で f=0.74。公称最大電力は100kV・0.1sで使用できる最大X線管入力で表す。
- インバータ周波数を高くすると管電圧リプルは小さく変圧器は小型化するが、鉄損(ヒステリシス損・渦電流損)は増加し電磁障害(EMI)対策の必要性が高まる。整流後に高周波変換するため電源位相に関係なくX線を発生・遮断でき、単相電源でも三相並みの低リプルが得られる。定格出力は電源インピーダンスに依存する。
- 共振形インバータは共振点に近づけるほど回路電流が増すため、大負荷ほど周波数が高くなる。ソフトスイッチングにより非共振形より損失が小さい。
- コンデンサ式X線装置は蓄積電荷 Q=CV で動作し放電に伴い管電圧が低下する。波尾切断電圧は残存電荷(初期電荷 − 放出電荷)を容量で割って求める。2ピーク形の管電圧調整は単巻変圧器の出力側で行い、定電圧形のX線開閉はテトロード管で制御する。
国試ポイント: リプル百分率の範囲と係数f(1.0/0.95/0.74)の対応は暗記必須。周波数を上げたときの「変わる向き」を整理する。
X線検出器(FPD・CR・I.I.)
平面検出器(FPD)は直接変換方式(a-Se光導電膜でX線を直接電荷に変換)と間接変換方式(CsI:TlやGOSシンチレータで光に変えa-Siホトダイオードで電荷化)に分かれ、いずれも各画素の電荷をTFTスイッチングで順次読み出す。
- 直接変換方式は光変換過程がなくボケが少ない。X線検出から信号出力までリアルタイムで、パルス照射に同期した動画撮影も可能。空間分解能は画素サイズに依存し小さいほど高分解能。DQE・ダイナミックレンジはアナログ系より広い。
- 補正処理: オフセット補正はX線非照射時の暗電流、ゲイン補正は均一X線照射画像を基準に変換層・素子間の感度ばらつき、欠損補正は欠損画素を周囲の正常画素から補間する。
- CR(コンピューテッドラジオグラフィ)は輝尽性蛍光体(イメージングプレート)を検出媒体とし、赤色レーザー光(約600nm)で励起して青紫色(約400nm)の輝尽発光を生じさせ、光電子増倍管で検出しA/D変換する。発光は励起光より波長が短くエネルギーが大きい。
- CRのフェーディング(潜像退行)は高温ほど大きい。両面集光方式は片面集光方式より集光効率が高い。蓄積コンデンサはCR読取系には不要(コンデンサ式X線装置の要素)。
- I.I.は視野切り替えを電極電圧で行い、出力像の輝度は拡大率の2乗に反比例。性能評価項目に変換係数と量子検出効率(DQE)を含む。
国試ポイント: 直接/間接変換の変換層(a-Se対CsI・GOS)と、オフセット/ゲイン/欠損の3補正の役割分担を混同しない。
各種X線撮影装置
- 乳房用X線装置: 軟X線を用い、ターゲットにMo・Rh・W、放射窓にBeを使用。胸壁側に陰極を配置しヒール効果で乳房全体の線量を均一化する。拡大率は2以下、焦点皮膚間距離は原則60cm以上。
- 自動露出制御(AEC・ホトタイマ): 検出器が設定線量に達すると照射を終了し受像器入射線量を一定に保つ。照射野を狭くすると散乱線が減り到達線量率が下がるためmAs値は大きくなる。被写体厚が過大だとバックアップタイマが先に働き入射線量が不足する。
- 散乱線除去グリッド: グリッド比=高さ/箔間隔 (h/D)、密度は中心部1cm当たりの箔数、露出倍数(ブッキーファクター)=1/Tt、選択度=一次線透過率/散乱線透過率 (Tp/Ts)。密度が同じならグリッド比が大きいほど露出係数は大きい。
- 透視撮影装置: アンダーテーブルX線管形は散乱線が天板等で減弱してから術者に届くため、オーバーテーブル形より術者被ばくが少ない。JISは危害を与える操作をデッドマン形制御とし、通常透視の最大空気カーマ率を50 mGy/minと規定する。
- DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)は2種の異なるエネルギーのX線を照射し、透過率の差から骨と軟部組織を分離して骨密度(g/cm²)を算出する。
国試ポイント: グリッドの各評価量の定義式と、AECで照射野・被写体厚を変えたときのmAs値の増減方向を押さえる。
MRI・CT・核医学・放射線治療装置
- MRI装置は静磁場磁石、傾斜磁場コイル、RFコイル(送受信)で構成される。傾斜磁場コイルは位置情報を空間符号化し、急峻なパルス電流と静磁場のローレンツ力で振動して大きな作動音を生じる。QD(quadrature detection)コイルは位相が90度異なる2系統で受信しS/Nを高める受信コイルで、傾斜磁場コイルではない。永久磁石形はクエンチが発生しないが磁場強度・安定性は超電導形に劣る。
- CT装置の日常点検にはノイズ(水ファントムの標準偏差)測定が含まれ、CTDI(線量評価)は定期的な精度管理で実施する。ガンマカメラはシンチレータで光に変換し光電子増倍管で検出し、コリメータは平行多孔型が主流、半導体検出器にはCdZnTeを用いる。PET装置ではLOR(Line of Response)を束ねて計数を増やす。
- 直線加速器(リニアック)のフラットニングフィルタは照射野内のX線強度分布を平坦化する。ビーム中心ほど厚く周辺ほど薄い形状でターゲット下流側に置き、通過後は線質が硬化する。270度偏向マグネットは電子ビームを収束させターゲットまたは散乱箔へ導く。
国試ポイント: MRIの作動音源=傾斜磁場コイル、QDコイル=受信系、フラットニングフィルタの目的と形状は繰り返し問われる。
頻出ポイント
- 回転陽極の短時間許容負荷 ∝ 焦点軌道径 × √(回転数)。軌道半径1.2倍で約10%増。
- X線管入力の係数f: リプル10%以下→1.0、10〜25%→0.95、25%超→0.74。
- ヒール効果: 陽極側の強度が低く陰極側が高い。乳房撮影は胸壁側に陰極。
- FPDの3補正: オフセット=暗電流、ゲイン=感度ばらつき、欠損=周囲画素で補間。
- CR: 励起光は赤色(約600nm)、輝尽発光は青紫色(約400nm)。
- グリッド比=h/D、露出倍数=1/Tt、選択度=Tp/Ts。
- AEC: 照射野を狭くするとmAs値は増加。MRIの作動音源は傾斜磁場コイル。
国試での出題(年度別)
この科目はデータのある年度で計 81 問。番号をタップで問題へ。解いた記録は緑/赤の枠で残り、右上の青点は解説ありです。