医用画像情報学
情報の表現からデジタル画像の成り立ち、DICOM・HL7 などの標準規格、医療情報システム、モニタ品質管理、情報セキュリティまでを扱う科目である。
情報の表現とコンピュータの基礎
情報は 2 進数で表され、1 byte = 8 bit、n bit で 2^n 通りを表現できる。
- 2 byte(16 bit)の符号なし整数は 0〜65,535(= 2^16 − 1)を表せる。
- 16 進法は 0〜9 と A〜F の 16 種の記号を用いる。10 進の 0.1 のように 2 進数では循環小数になる値がある。
- 1 Gbyte = 1,024 Mbyte である。
- アスキーコードは文字(非数値データ)を表す符号形式である。
- 論理演算はベン図と対応づける。(NOT A) AND B は「B のみに属する領域」。
- コンピュータの基本構成は入力・出力・制御・演算・記憶装置。OS はユーザインターフェースの提供を担う。
- RAID は複数のハードディスクを組み合わせ、仮想的に 1 台のディスク装置として扱う。
国試ポイント: 小数を含む基数変換、1,024 倍系の単位換算、符号なし整数の範囲が計算問題で直接問われる。
デジタル画像の基礎(標本化・量子化・階調)
アナログ画像は標本化と量子化を経てデジタル画像になる。
| 処理 | 決めるもの | パラメータ | 細かくすると |
|---|---|---|---|
| 標本化(サンプリング) | 空間分解能 | 標本化間隔・マトリクスサイズ・画素サイズ | 画素数が増え空間分解能が向上する |
| 量子化 | 階調(濃淡の段階数) | ビット深度(n bit → 2^n 階調) | 階調数が増え濃度分解能が向上する |
- 標本化間隔は空間分解能を直接左右する。標本化定理では、信号の最高周波数の 2 倍以上で標本化すれば元信号を再現できる。
- 量子化の階調数は n bit で 2^n(10 bit なら 1,024 階調)。
- フーリエ変換の核関数 e^(−i2πux) はオイラーの公式で cos(2πux) − i sin(2πux) と書ける。
画像データ量の計算
データ量 [byte] = 画素数 × 1 画素あたりのバイト数。9〜16 bit の階調は 2 byte/画素で記録する。
- 例: 2,048 × 2,048 画素、1,024 階調(10 bit → 2 byte)→ 8 MB。
- 有効視野 ÷ 画素サイズで画素数を求めてから計算する形式もある。
国試ポイント: 「1,024 階調 = 10 bit = 2 byte/画素」と 1 MB = 1,024 × 1,024 byte の換算を確実に。
DICOM 規格
DICOM は医用画像の通信・保存に関する国際標準規格で、装置間の閲覧互換性を確保する。
- オブジェクト指向モデルに基づき、患者・検査・シリーズ・画像を階層的に定義する。中核は情報オブジェクト定義(IOD)とサービスクラスで、両者の組が SOP である。
- 通信には TCP/IP を用い、エンコード方式はトランスファーシンタックスで規定される。
- 対応装置には conformance statement(適合性宣言書)が添付される。
- MWM は検査予約情報の提供、MPPS は実施・進捗の通知を行うサービスである。
- GSDF は視覚特性に基づき、モニタの階調表示を装置間で一定に保つ標準表示関数である。
- RDSR は線量情報を扱う DICOM 構造化レポートである。
国試ポイント: 「DICOM で定義されていないもの」型が定番。GSDF・MWM・MPPS・SOP・適合性宣言書は規格内、コネクタソンや ICD-10 は規格外。
医療情報システム(HIS・RIS・PACS)と HL7・IHE
- HIS(病院情報システム)は患者基本情報の登録やオーダ発行を担う。撮影オーダには撮影部位の情報が含まれる。
- RIS(放射線情報システム)は検査予約管理・実施情報入力・照射録作成・モダリティ連携を担う。患者基本情報の登録は HIS 側で、RIS には含まれない。
- PACS は医用画像を保管し、検索・参照する。過去画像との比較が容易で、複数端末から同時参照でき、放射線部門以外の画像も保管できる。
- HL7 は医療情報交換のための標準規格で、OSI 参照モデルのアプリケーション層に対応する。
- IHE は DICOM・HL7 など既存規格を組み合わせて相互接続性を実現する統合プロファイルの枠組みである。PDI は可搬型媒体による画像提供を規定し、DICOM 画像を使用する。
国試ポイント: 機能分担(患者登録 = HIS、照射録 = RIS、画像保管 = PACS)と、DICOM/HL7/IHE の役割の違いが繰り返し問われる。
医用画像表示モニタの品質管理
医用モニタの品質管理は JESRA X-0093 や JIS T 62563-1 に基づき、TG18 テストパターンで行う。
- TG18-QC: 解像度・輝度・ひずみ等を一括確認する全般的画質評価用の総合パターン。
- TG18-CT: 輝度応答(コントラスト応答)評価用。
- TG18-UN 系: 輝度均一性評価用(輝度計と併用)。
- 輝度は輝度計、色度は色度計、室内照度は照度計で測定する。
- JIS T 62563-1 の評価項目は輝度応答・輝度不均一性・視野角特性・色度など(ノイズは含まれない)。
- 機器の新規設置時には受入試験を実施する。
国試ポイント: 「評価項目 × パターン」の組合せ問題が頻出。QC = 全般、CT = 輝度応答、UN = 均一性。
電子保存の 3 原則と情報セキュリティ
診療録等の電子保存には 3 原則が求められる。
- 真正性: 作成の責任の所在を明確にし、故意・過失による虚偽入力・書換え・消去・混同を防止すること。
- 見読性: 必要に応じて内容を肉眼で読める状態(書面表示等)にできること。
- 保存性: 法定期間中、復元可能な状態で保存できること。
- 情報セキュリティの 3 要素(機密性・完全性・可用性)は別概念である。
- ファイアウォールは外部と内部のネットワーク間で特定の通信だけを許可する。
- テレラジオロジー(遠隔画像診断)では施設間を VPN 回線等で接続する。
- 不正アクセス防止には生体認証が有効。部署共通アカウントや個人 PC への患者情報保存は不適切。
- 診療目的の利用が 1 次利用、院内勉強会・教育・研究など診療目的外の利用が 2 次利用である。
国試ポイント: 3 原則とセキュリティ 3 要素の振り分け、対応関係(責任の明確化 = 真正性、書面表示 = 見読性)が最頻出。
データ圧縮と人工知能
- 画像圧縮には、完全に元へ戻せる可逆圧縮と、情報の一部を捨てる非可逆圧縮がある。
- 離散コサイン変換(DCT)は画像を周波数成分に分解し高周波成分を削減する手法で、JPEG で用いられる。
- ハフマン符号化は出現頻度に基づく可逆圧縮のアルゴリズムであり、AI 技術ではない。
- 画像認識の AI 技術には機械学習・深層学習・人工ニューラルネットワーク・誤差逆伝播法が含まれる。
- 分類モデルの評価指標は正解率・適合率・再現率・F 値(適合率と再現率の調和平均)。陽性的中率などは混同行列から算出する。
国試ポイント: 「関係ないもの」を選ぶ除外型が中心。圧縮技術と学習技術を混ぜた選択肢、評価指標に紛れた「比例尺度」(尺度水準の名称)に注意。
頻出ポイント
- 画像データ量 = 画素数 × バイト数/画素。9〜16 bit は 2 byte/画素、n bit の階調数は 2^n。
- GSDF はモニタの標準表示関数、MWM は検査予約情報の提供、MPPS は実施情報の通知。
- 電子保存の 3 原則は真正性・見読性・保存性。機密性・完全性・可用性はセキュリティの 3 要素で別物。
- 患者基本情報の登録は HIS、照射録・検査予約管理は RIS、画像の保管・参照は PACS。
- モニタ品質管理: TG18-QC = 全般的画質、TG18-CT = 輝度応答、TG18-UN = 輝度均一性。
国試での出題(年度別)
この科目はデータのある年度で計 49 問。番号をタップで問題へ。解いた記録は緑/赤の枠で残り、右上の青点は解説ありです。